2026.06.11
ドローン映像コンテストの審査員は、何を見ているのか
先週、台風が日本を直撃した日のことです。私はその日、幕張メッセにいるはずでした。Drone Movie Contest 2026の審査員として、授賞式の壇上に立つ予定でした。
けれど台風6号の影響で交通は大きく乱れ、結局、会場に行くことはできませんでした。審査員に選んでいただいたのに、肝心の当日に壇上にいない。私のコメントと総評は、運営の方に代読してもらう形になりました。我ながら、なかなか締まらない話だなと。
ただ、あの日に読み上げてもらった言葉は、自分にとってもあらためて大切にしたいものでした。今日はその振り返りを、少し書いてみます。
応募する側から、選ぶ側へ
審査員席に座って最初に感じたのは、評価する難しさより、自分が何を大切に見ているのかを問われる難しさでした。
実は私、このコンテストにはかつて応募する側として参加していました。グランプリをいただいた年もあれば、ファイナリストで終わった年もある。かつては自分の作品を届ける側だった人間が、今度は人の作品を選ぶ側に座っている。少し不思議で、同時に背筋の伸びる経験でした。
数十本の作品を続けて観ていると、応募者だった頃には見えなかったものが見えてきます。撮影地の選び方、構成の丁寧さ、空撮技術の高さ、作品に向き合った時間。どの作品にも、それぞれの努力が確かに刻まれている。ただ、観終わったあとに心に残る作品と、そうでない作品があるのも事実でした。その差はどこにあるのか。審査員席で、私はずっとそれを考えていました。
きれいに撮れた映像は、なぜ記憶に残らないのか
結論から言うと、きれいさと、心に残ることは、似ているようで別物だからです。
今のドローンは本当に高性能で、少し練習すれば誰でも驚くほど美しい空撮映像を撮れる時代になりました。4Kの滑らかな映像、夕日に染まる山並み、雲海を抜けていくダイナミックな飛行。見た瞬間に目を奪われる映像も、たくさんあります。
ただ、何十本も続けて観ていると、その美しさが少しずつ似通って見えてくる瞬間がある。絶景を撮ること自体の価値がなくなったわけではありません。けれど、絶景だけで人の心に残る時代ではなくなってきているのだと思います。その場所をなぜ撮るのか。その景色を通して何を伝えたいのか。観る人にどんな記憶を残したいのか。きれいに撮ることと心に残ることの違いは、たぶんそこにあります。
私が一本を選んだ理由
審査員特別賞として、私は一本の作品を選ばせてもらいました。厳冬期の山岳をドローンで撮り続けた作品です。
選んだ理由は、映像の完成度ではありません。誰も簡単には撮りに行かない場所へ向かい、それでも撮り続けた撮影者の執念に、光を当てたかった。冬山にカメラとドローンを担いで入り、寒さの中で風を読み、飛ばせる瞬間を探す。それでも思うように撮れない日がある。その大変さは、私にも少しだけ想像がつきます。
技術的に洗練された作品は、ほかにもたくさんありました。そのなかで私が選びたかったのは、撮影者の覚悟がまっすぐ映っている一本でした。整っていることと、覚悟が映っていることは、別の話なのだと思います。
山頂で、ドローンが飛ばせなかった日
なぜ執念に心を動かされたのか。それは、私自身が山で何度も飛ばせずに帰ってきているからです。
山梨の金峰山。標高2,500メートルを超える山頂を目指して、夜中から登ったことがあります。朝焼けの瞬間をドローンで押さえたくて、暗いうちから機材を背負って歩き始めました。息を切らして山頂にたどり着き、夜明けを待つ。空が少しずつ白んでくる。さあここからだ、というところで、風が強すぎて飛ばせない。
地上では穏やかに見えても、稜線に出ると風の状況はまったく違います。山の上で無理に飛ばすことはできません。判断を誤れば機体を失うだけでは済まず、登山者や周囲の人を危険にさらします。結局その日は、ドローンを一度も飛ばせないまま機材を担いで下山しました。ご褒美に持っていったおにぎりとドリンクが、登っているあいだにカチカチに凍っていたこともあった。あのときは正直、かなり心が折れました。
でも、そういう撮れなかった日の積み重ねが、今の自分の映像づくりにつながっている気もします。
私が審査員特別賞をいただいた当時、審査員を務めた映像ディレクターの伊藤広大さんに、私の作品を「何度も山に登ったのが想像できる」と言っていただいたことがありました。伊藤さんの映像は、私にとって目標のひとつです。その方に、画面の奥にある山行の時間まで感じ取ってもらえたのは、本当に嬉しい出来事でした。あの凍ったおにぎりも、無駄ではなかったのかもしれません。
当日に代読してもらった総評
ここで、当日に運営の方へ読み上げてもらった総評を、そのまま載せておきます。
今回、審査員を務めさせていただきました、大沢です。
応募作品はどれも力作で、撮影地の選び方、構成、空撮技術、そして作品に向き合う時間が、それぞれの映像に刻まれていました。
受賞された皆さん、ファイナリストの皆さん、そして応募してくださった皆さんに、心から敬意を表します。
今回、多くの作品を拝見して、あらためて感じたことがあります。
きれいに撮ることと、心に残ることは、似ているようで違うということです。
機体の性能が上がり、美しい空撮映像を撮れる時代だからこそ、その先に何を見ているのか。その景色を通して何を伝えようとしているのかが、これからますます問われていくと思います。
こうしたコンテストに挑戦し、自分の作品を世に出すこと自体にも大きな価値があると感じました。
受賞された方、ファイナリストに残られた方、そして応募されたすべての方へ。
作品を完成させ、この場に届けたこと自体が、胸を張っていい挑戦だと思います。
皆さまの次の作品を、私自身も楽しみにしています。ありがとうございました。
絶景の先に、何を映すか
というわけで、ドローン映像で大切なのは、機材の性能でも飛行技術でもないのだと、あらためて思います。
もちろん、安全に飛ばす技術も、美しく撮る技術も大前提です。ただ、その先に伝えたいものがなければ、映像はきれいな景色のまま終わってしまう。なぜその場所なのか、なぜその時間なのか、誰に何を届けたいのか。そこまで考えて初めて、空撮はただの記録ではなく、心に残る映像になるのだと思います。台風で会場に行けなかった審査員が言うと、説得力が半分くらいに減りそうですけど。
山梨で、空撮のご相談を
AME TSUCHIでは、山梨を拠点に空撮・映像制作をしています。金峰山のような山岳風景から、甲府盆地の暮らし、地域の事業、観光PR、まちの記録まで。ただきれいな映像を撮るだけでなく、その場所や事業の奥にある「伝えたいもの」を一緒に考えるところから始めます。
空から撮ることで、何を届けられるのか。どんな景色なら、その土地らしさや事業の魅力が伝わるのか。そんなところから、気軽にご相談いただけたら嬉しいです。風が穏やかな日を選んで、山梨でお待ちしています。

Drone Movie Contest 2024 グランプリ/審査員特別賞、JAPAN DRONE CINEMA AWARD W受賞。東京カメラ部「動画クリエイター2023」10選。第8回日本国際観光映像祭2026 オフィシャルセレクション選出。国家資格・一等無人航空機操縦士(夜間・目視外)および無人航空従事者1級を取得。デジタルハリウッド「空撮クリエイターコース」講師(空撮ストーリーテリング担当)、国家資格講習の修了審査員としても活動。安全性と信頼性を重視したドローン運用を軸に、ディレクター/デザイナー/フォト・ビデオ・ドローングラファーとして、「自分自身が心を動かされた人や風景」の魅力を、多角的な視点から伝える制作を行っている。

