2026.05.24
ドローン映像は、絶景を撮れば伝わるのか
先日、あるドローン映像コンテストで審査員を務めました。
数年前まで、私は応募する側にいました。グランプリをいただいた年もあれば、ファイナリストで終わった年もあります。
その同じコンテストに、今度は評価する側として座る。正直に言うと、最後までどこか落ち着きませんでした。
ただ、何十本もの作品を続けて観ているうちに、ひとつ、はっきりと見えてきたことがあります。
それは、誰かの作品を評価するためだけの話ではありません。
自分が撮るときにも、そのまま突きつけられる問いでした。
きれいに撮れているのに、なぜ記憶に残らないのか

きれいな映像が記憶に残らない理由は、その景色で「何を伝えたいのか」が見えてこないからです。
技術的に見事な作品は、たくさんありました。
カットの組み立ても、色の整え方も、飛行の安定感も、十分に美しい。見ていて気持ちのいい映像も多くありました。
それでも、観終わって数分で記憶から薄れてしまう作品と、しばらく心に残る作品があります。
その差はどこにあったのか。
自問自答する中で、「絶景を見せて終わっているか」「その絶景の先に、何かを描こうとしているか」。ここに尽きるように思いました。
空撮は、ともすれば“きれいな景色”を量産できてしまいます。
高く飛ばせば、地上では見えなかった風景が見える。海も山も町並みも、少し特別に見える。
だからこそ、きれいなだけでは引っかからない。
むしろ、きれいに撮れる時代だからこそ、その映像で何を見せるのか、何を残すのかが問われるのだと思います。
「ドローンでなければ撮れない」とは何か

「ドローンでなければ撮れない映像」とは、単に高い場所から撮った映像のことではありません。
高いところから撮る。
大きく俯瞰する。
地上からは見えない角度で風景を切り取る。
それ自体は、もう特別なことではなくなりました。
心に残った作品に共通していたのは、俯瞰を「物語を語るための視点」として使っていたことです。
ただ高く飛ばすのではなく、その高さでなければ見えない関係性を捉えていました。
たとえば、町と山の距離。
川と暮らしのつながり。
人の動きと土地の広がり。
そこにある営みが、空から見ることで初めて立ち上がってくる。
自分の経験で言えば、北海道・標津町で「鮭と生きる町」を撮ったとき、いちばん時間をかけたのは、いわゆる絶景ではありませんでした。
もちろん、空から見る標津の風景は美しいです。
けれど、その土地が本当に立ち上がってくるのは、漁師さんの手元や、港の空気、町に流れる生活の断片が映り込んだ瞬間だったように思います。
空からの視点は、風景を大きく見せるためだけにあるのではない。
その土地にある人の営みや、目に見えにくい関係性を見せるためにもある。
そこに気づけるかどうかで、空撮の意味は大きく変わるのだと思います。
審査する側に回って、自分が問い直されたこと

審査する側に立って感じたのは、人の作品を裁くことの難しさではなく、自分の物差しを点検し続けることの難しさです。
最初は「この作品はここがいい」「この作品はここが弱い」と、自分なりに整理しながら観ていきます。
けれど、後から出会う一本によって、それまでの見方が揺らぐことがある。
自分が「いい」と思っていた基準は、本当にその作品の核心を見ていたのか。
技術に目を奪われすぎていないか。
逆に、少し荒さがあっても、強く伝わってくるものを見落としていないか。
そんなことを、何度も考えました。
ほかの審査員の方と意見を交わす中でも、同じ作品を観ているのに、引っかかる場所が少しずつ違う。
その違いもまた、とても勉強になりました。
選ぶ側に立つというのは、偉くなることではなく、自分の見方の癖を知ることでもある。
今回、あらためてそう感じました。
山梨で空撮を頼むとき、最初に決めておきたいこと

山梨でドローン映像や空撮を依頼するとき、最初に決めておきたいのは、「どこを飛ばすか」よりも「何を伝えたいか」です。
もちろん、実務上の確認は欠かせません。
山梨は、観光地の側面もあり、自然も南アルプスや富士山周辺など、飛行にあたって事前の確認や調整が必要になる場所も多くあります。富士山周辺は特に、空域や人の多さ、周辺環境への配慮も含めて、慎重な準備が必要です。
ただ、許可や段取りと同じくらい——いや、それ以上に最初に決めておきたいことがあります。
この映像で、誰に何を伝えたいのか。
観た人に、どんな印象を持って帰ってほしいのか。
その土地や事業の、どの部分を残したいのか。
そこが定まっていないと、どれだけ美しく撮れても、結局は「絶景紹介」で終わってしまいます。
観光PRでも、企業紹介でも、地域の記録でも同じです。
大切なのは、きれいな映像を撮ることだけではなく、その映像がどこへ向かっているのかを決めること。
何十本もの作品を観て、そして自分でも撮ってきて、つくづくそう思います。
結局のところ、心に残る映像には「何を伝えたいか」があります。
これは、あまりにも当たり前のことかもしれません。
けれど、現場に入ると、つい後回しになりやすいことでもあります。
天気はどうか。
どこから飛ばせるか。
どの時間帯がきれいか。
どんなカットが撮れるか。
そうしたことを考えているうちに、いちばん大事な問いが、少し奥へ引っ込んでしまう。
今回、審査席に座って、そのことを自分にも言い聞かせるような気持ちになりました。
ドローン映像は、絶景を撮れば伝わるのか。
私の答えは、やはり「それだけでは伝わらない」です。
絶景の先に、何を描くのか。
その土地にある営みや、そこに関わる人の思いを、どう映像にのせるのか。
そこまで考えてはじめて、空からの映像は「きれいな風景」ではなく、「伝わる映像」になっていくのだと思います。
山梨で、あるいはご自身の地域で、ドローン映像を考えている方へ。
「きれいに撮る」の、その先にある
「何を伝えるか」から、ご一緒に考えさせてください。
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Drone Movie Contest 2024 グランプリ/審査員特別賞、JAPAN DRONE CINEMA AWARD W受賞。東京カメラ部「動画クリエイター2023」10選。第8回日本国際観光映像祭2026 オフィシャルセレクション選出。国家資格・一等無人航空機操縦士(夜間・目視外)および無人航空従事者1級を取得。デジタルハリウッド「空撮クリエイターコース」講師(空撮ストーリーテリング担当)、国家資格講習の修了審査員としても活動。安全性と信頼性を重視したドローン運用を軸に、ディレクター/デザイナー/フォト・ビデオ・ドローングラファーとして、「自分自身が心を動かされた人や風景」の魅力を、多角的な視点から伝える制作を行っている。




