標津町の日の出(四角い太陽)

北海道・標津町。鮭の聖地を、誇りとして残す|制作の裏側

北海道・標津町。“誇り”を映像にする、という仕事

北海道標津町 鮭漁の一コマ
午前2時から始まる標津町の鮭漁

SAGOJO様を通じて、2025年10月に北海道・標津町の観光PR映像制作を担当しました(担当課:標津町役場 商工観光課様)。

当初は2泊3日の想定でした。ただ、AME TSUCHIが目指したのは、名所や食を並べるだけのPRではなく、「住んでいる人が、自分の町をもっと好きになれる映像」です。
観光PRで、最初に動いてほしいのは誰の心でしょう。

熊本県のPRキャラクター「くまモン」の企画・プロデュースにも関わった放送作家の小山薫堂氏は、
住民が身近な価値を再発見し、誇りが広がることで外の人の共感につながっていった、という趣旨を語っています。(引用:観光経済新聞/2019年)

AME TSUCHIも、この順番を大切にしています。
そこで打ち合わせの段階で、完成のイメージと撮影の段取りを先に共有し、滞在日数を含めて工程を組み替える提案をさせていただきました。
提案はご快諾いただき、標津には9泊10日(実質10日間)滞在して撮影を進めることになります。

この映像で伝えたかったこと

この映像で大切にした考え方は、AME TSUCHIとして取り組むすべての仕事に共通しています。

北海道・標津町という土地に暮らし、日々この町を支えている人たちの思いや希望を、どうすれば表面的にならず、映像として残せるか。
その一点を軸に、企画から構成、撮影、編集までを組み立てました。

魚の加工に長年携わり、漁師への感謝と、食卓へ届ける責任を静かに背負っている人。

真夜中から海に出て、不漁という厳しい現実と向き合いながらも、この町で鮭漁を続ける意味を、次の世代へつなごうとする人。

外からこの町に関わり、「標津が好きだ」という気持ちを、自分の言葉で外へ伝えようとしている人。

そうした一人ひとりの姿を通して、この町には、誇りを持って生きている大人がいるということを、映像として残したいと考えました。

また、この作品にはもう一つの視点があります。
それは、次代を担う子どもたちが、
「大人ってかっこいい」「この町で生きていることを誇りに思える」
そう感じられる風景を残すことです。

子どもにも、町の外の人にも、「標津っていいな」と思ってもらえること。
その積み重ねが、未来へつながっていく。
この考え方を軸に、AME TSUCHIは映像制作に取り組んでいます。

「鮭の聖地」を、観光PRの言葉で薄めない

網にかかる鮭
漁師の勇ましい掛け声とともに引き揚げられる鮭

打ち合わせで最初に共有されたのは、「標津は鮭の聖地である」ということでした。
ここで扱いたかったのは、“鮭が有名”という説明ではありません。鮭がいることで人の暮らしが成り立ち、土地の歴史が積み重なってきたこと。さらには、一万年という時間のスケールの上に、いまの営みが続いていることです。

だから今回の設計は、名所紹介を足す前に、町の背骨を一本通すところから始めました。ロングもショートも、鮭と時間の流れを中心に据える。映像を見た人が「きれいだったね」で終わらず、「この町には理由がある」と感じられる形を目指しました。

午前2時の漁港。暗い海から始まった一本の線

漁船から見える標津の星空
鮭漁を終えて漁港に帰る途中で見た満点の星空

標津の撮影で、いちばん最初に向かったのは漁港でした。
午前2時。まだ街は寝ていて、灯りは必要な分だけ残っている。海は黒く、風は冷たく、音が少ないぶん、エンジンの気配や足音がよく響きます。

ドローン空撮による夜の標津港
真夜中の標津港をドローンで撮影

「鮭の聖地」を映像にすると決めた以上、ここを外すと標津にならない。そう感じました。
鮭が獲れるから町がある、ではなく、鮭がいることで人が働き、支え合い、暮らしが回っていく。その“現在形”が、いちばん濃く立ち上がるのが漁港でした。

暗い海の前で、カメラを回す手は少し慎重になります。派手な絵は撮れない。だけど、この時間帯の空気は嘘をつけない。
映像で町の誇りを残すとき、最初に撮るべきものは何でしょう。私は「働く音」から始めました。

自然は予定表を見てくれない。動き続けた日々のこと

北海道標津町の日の出前の静寂な時間
しべつ海の公園から見る日の出直前の風景

例えば、撮りたい景色があっても、自然はこちらの段取りどおりに整ってくれません。
滞在中、雨が本格的に降ったのは一日だけでした。それでも、風、雲の厚み、光の角度、海の表情。条件が少しズレるだけで、同じ場所でも画の意味が変わってしまう。だからその日その日で判断を変える必要がありました。

実際の毎日は、待つというより“動き続ける”に近いです。毎日午前2時、3時に動き出して、撮影して、移動して、また撮影して、また移動する。
止まっていたのは天気ではなく、「ここだ」と言える数分のタイミングでした。

北海道 根室にいたキタキツネ
身近にいる野生動物だからこそ距離が大事

もうひとつ、標津の自然は「見せ場」を用意してくれません。
移動中に野生動物の気配を感じることもあるし、遠くから声が聞こえることもある。こちらが慣れてしまうのが一番危ないので、距離を守り、予定を変える判断も含めて、その都度リズムを整えました。

撮れない日は、焦りも出ます。滞在日数が伸びれば、なおさらです。
それでも、無理に“それっぽい絵”で埋めるのはやめました。鮭と一万年の時間を軸にするなら、天候や自然と折り合いをつけながら、必要な瞬間だけを積み上げたほうが、最終的に一本の線になります。

映えるカットより、一本の線。編集で「一万年」を通す

鮭漁を終えて標津港で働く人たち
朝4時の標津港の様子

素材が揃ってくるほど、いちばん怖いのは「きれいにまとまってしまう」ことでした。
標津は、ただ美しいだけで成立する町ではありません。鮭がいて、人が働いて、暮らしが回っている。その積み重ねが、一万年という時間の上にある。そこを外すと、画が良くても“どこかの海辺”になってしまいます。

だから編集では、映えるカットを優先するのを一度やめました。
先に決めたのは、町の背骨になる順番です。世界観に引き込み、「標津」を象徴する日の出へ。午前2時の漁港で現在の営みを掴み、そこから一万年の背景へ視点を引いていく。最後は、いまを誇れる終わり方に整える。一本の線として見えるように、配置を組み替えました。

景色の良さではなく、土地の理由が残る編集。今回いちばん力を入れたのは、その設計でした。

順番を整えると、町の輪郭が戻る

ドローン空撮からの忠類川
忠類川:北海道東部を流れる、美しい自然と豊かな農業を支える重要な河川

最初の編集で素材が揃ったとき、「きれい」だけが先に立つ危険がありました。
そこで冒頭は説明を急がず、まず世界観に引き込み、標津の象徴として日の出を置く。

次に午前2時の漁港で“いま”の鼓動を掴み、視点を引いて一万年の土地の時間へ。最後は現代の誇りに戻して終える。順番を整えるだけで、映像の意味が一本につながりました。

切り口が違っても、温度はひとつに

自然/食/文化/人/未来。見せ方は変えても、町の文脈は切らない。色味、素材、キャプションの言葉まで揃え、バラバラに見えないように整えました。

映像を見る

シペ・オ ― 鮭と生きる町・標津

https://youtu.be/rQtee2xp29Q?si=HsSf0zklUeufBNJG

伝わるまで整える。会話とインタビュー設計、最後の微調整

インタビュー撮影の様子
住民の想いを映し、体温の残る映像を

映像は、撮って終わりではありません。
標津で交わした言葉の温度や、町の人たちが大切にしている感覚が、編集の途中で薄まっていないか。そこを何度も確かめながら仕上げていきました。

撮影前後のコミュニケーションでは、インタビューの設計も丁寧に行いました。
この町の誇りはどこにあるのか」「鮭と暮らしは、どうつながっているのか」「ここで生きることを、どう言葉にするのか」。答えを誘導するのではなく、相手の言葉が自然に立ち上がる質問を用意し、現場で会話の流れに合わせて深掘りしていく。そうして拾えた言葉が、映像の背骨になっていきます。

編集では、その背骨に沿って、カットの順番や間、色味、言葉の置き方を整えました。派手さよりも、町の輪郭が残ること。伝えたい芯が、きちんと伝わること。その一点に向けて、最後まで微調整を重ねました。

今回、特にありがたかったのは、標津町役場 商工観光課の皆さまが“映像を一緒につくる相手”として関わってくださったことです。
とくにご担当の方が、意図をただ受け取るのではなく、「標津として何を残したいか」を自分の言葉で整理し、必要な調整をテンポよく進めてくださいました。現場でも、言葉のニュアンスや見せ方の迷いどころを丁寧にすり合わせられたことで、映像の芯がぶれずに済みました。

そして標津の前後では、SAGOJO様が連絡や段取りの細部を整えてくださり、こちらは制作に集中できました。現地と制作の間がなめらかにつながったことも、最終的な完成度に直結しています。

標津町 商工観光課さまコメント

掲載許可に加えて、標津町商工観光課さまからコメントもいただきました(原文)。

映像制作にあたり、単なる美しい画を収めるだけでなく、私たちの意図や想いを丁寧に汲み取り、真摯に向き合ってくださった姿勢がとても印象的でした。

誠実で温かいお人柄が映像にも表れており、現地でのコミュニケーションを大切にしながら、納得がいくまで撮影から編集まで一貫して取り組んでくださいました。

作品を通じて、言葉以上のメッセージを届けてくださったことに心より感謝いたします。

標津町役場 商工観光課 様

外に届く前に、内側の誇りがある

標津港で働く漁師の方々
鮭漁は標津の誇り

観光PRというと、「どう見せれば来てもらえるか」が先に立ちます。もちろん、それも大事です。
ただ標津で強く感じたのは、外に届く力は、いつも内側から始まるということでした。

鮭がいるから町がある、ではなく、鮭がいることで人が働き、支え合い、暮らしが回っていく。そこに誇りが宿る。
その誇りは、声高に語られなくても、朝の漁港や、何気ない会話や、積み重ねられた手順の中に、静かに残っています。

映像づくりで私がやるべきことは、町を「盛る」ことではありません。
すでにある価値を見つけて、筋の通った順番でつなぎ、見た人が自然に受け取れる形に整えること。そうして初めて、「行ってみたい」は、軽い憧れではなく、ちゃんとした共感になります

あなたの仕事や地域にも、外に見せる前に、まず内側が誇れる瞬間があるはずです。
それは、どんな場面でしょう。

納品物・仕様

  • 納品内容:観光PR映像 1本+テーマ別ショート 5本(自然/食/文化/人/未来)
  • データ形式:4Kマスター/フルHDデータ(運用しやすい形式で納品)
  • 制作範囲:企画・構成/撮影(ドローン含む)/編集/関係者調整
  • 備考:公開は標津町「けさのさけ」やイベントなどに活用予定と伺っています。
    現時点ではAME TSUCHIのYouTube掲載版を本ページに掲載しています。

つくる前の段階から、ご一緒できます

「うちの町(会社)の良さはある。でも、言葉にすると薄くなる」
「PRを頼まれたけれど、観光っぽい映像にはしたくない」
もし、そんなモヤモヤがあるなら、一度お話を聞かせてください。

AME TSUCHIは、撮影の前に“何を誇りとして残すか”を一緒に整理し、構成から逆算して現場を組み立てます。派手に盛るより、すでにある価値が伝わる順番に整える。その方が、結果として外にも届くと考えています。

まだ形になっていない段階でも大丈夫です。
お問い合わせはフォームからお気軽にどうぞ。料金の目安だけでもお伝えできます。

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